TRIO・KenWood ST−8500 修理記録
平成25年10月19日到着    平成26年1月13日完成
A. 修理前の状況
  •  ST8500 Trio(KENWOOD)のステレオを、万博の開催時=1970年に購入して、程々にレコ‐ドを 聞いて楽しんで来ましたが、リタイアの年頃になってネットワークオーディオを愉しめると思った矢先、右ボリュームを絞っても「ガリガリ」と云う音が発生するようになりました。
    左のチャンネルもその予兆が出てきましたので、これは、昔とった杵柄で時間もあるから修理でもやるかと思い、ケンウッドJVCに問合せ、回路図のコピーを頂けないかと御願いしたのですが、公開していないので提供出来ないとの事でした。半固定VRの容量、仕様などの問合せをしたのですが、的を得た回答が得られず。
    コンデンサーからの交換からでも始めるかと思って、京都の寺町、大阪の日本橋をあたり始めたのですが、容量、仕様の合致したものを入手するには、メーカ で製造しているにも拘わらず、各店頭でお目に関わるのが難しい事が分かりました。これだけ物資の豊かな世の中でも 少々寂しくなった次第です。
     今まで出来るだけ大切に扱ってきたつもりなのですが、此処に来てコンデンサーの経年劣化による対応年数の書面を読まして頂くと、永い間、ご苦労さまと云う所になります。
     しかし、このセットには、センターボックスと左右にスピーカボックスが控えており、このアンプと付属品諸共、 没にするか。スピーカの30センチウーハーとスコーカ、ツィータ‐をネットワークを作成してスピーカボックスを残すかとか色々悩んでいますが。
     必要な内部電子部品を交換して頂いて気持ち良く音楽の聞ける 余生をと思ってオーバーホールの修理を御願いします。

B. 原因
  • 各部経年劣化の為、オーバホール修理依頼。

C. 修理状況
  • バイアス/バランスVR交換。
    電解コンデンサー交換(オーディオコンデンサー使用)。
    大型電解コンデンサー交換。
    整流ダイオードブリッジ交換。
    配線手直し、補強。
    劣化TR(トランジスター)交換。

D. 使用部品。
  • バイアス/バランス半固定VR                20個。
    電解コンデンサー                        66個。
    大型電解コンデンサー交換                  3個。
    フイルムコンデンサー                      6個。
    整流ダイオードブリッジ                     1個。
    TR(トランジスター)                       18個。


E. 調整・測定。

G. FMチューナ調整・測定。

M. AMチューナ調整・測定。

F. 修理費     98,000円

S. TRIO・KenWood ST−8500 仕様(カタログ・マニアルより)。

A. 修理前の状況
A11. 点検中 前から見る
A12. 点検中 前右から見る
A13. 点検中 後から見る
A14. 点検中 後左から見る
A21. 点検中 上から見る
A22. 点検中 下から見る
C. 修理状況
C11. 修理前 低音AMP基板。 終段TR(トランジスター)は2SD155(Pc=25W)のSEPP、これでPo=22W?
C12. 修理後 低音AMP基板
         電解コンデンサー16個、終段TR(トランジスター)4個、フイルムコンデンサー2個、半固定VR4個交換。
C13. 修理前 低音AMP基板裏
C14. 修理(半田補正)後 低音AMP基板
C15. 完成低音AMP基板 洗浄後、コート液を塗り、乾燥後。
C21. 修理前 中音AMP基板。 終段TR(トランジスター)は2SD155(Pc=25W)のSEPP、これでPo=22W?
C212. 修理中 中音AMP基板 終段TR(トランジスター)を点検中。
C22. 修理後 中音AMP基板
         電解コンデンサー14個、終段TR(トランジスター)2個、フイルムコンデンサー2個、半固定VR6個交換。
C23. 修理前 中音AMP基板裏
C24. 修理(半田補正)後 中音AMP基板
C25. 完成中音AMP基板 洗浄後、コート液を塗り、乾燥後。
C31. 修理前 高音AMP基板。 終段TR(トランジスター)は2SD222(Pc=10W)のSEPP、これでPo=7.5W?
C32. 修理後 高音AMP基板。 電解コンデンサー14個、終段TR(トランジスター)4個、TR(トランジスター)4個、
           フイルムコンデンサー2個、半固定VR6個交換。
C33. 修理前 高音AMP基板裏
C34. 修理(半田補正)後 高音AMP基板
C35. 完成高音AMP基板 洗浄後、コート液を塗り、乾燥後。
C41. 修理前 トーンコントロール基板
C42. 修理後 トーンコントロール基板。
                        電解コンデンサー4個、TR(トランジスター)2個、フイルムコンデンサー2個交換。
C43. 修理前 トーンコントロール基板裏
C44. 修理(半田補正)後 トーンコントロール基板裏 半田を全部やり直す。
C45. 完成トーンコントロール基板裏 洗浄後防湿材を塗る。
C71. 修理前 EQ_AMP基板。
C72. 修理後 EQ_AMP基板 電解コンデンサー11個、TR(トランジスター)2個交換。
C73. 修理前 EQ_AMP基板裏。
C74. 修理(半田補正)後 EQ_AMP基板裏 半田を全部やり直す。
C75. 完成EQ_AMP基板裏  洗浄後防湿材を塗る
C91. 修理前 チューナ基板。
C92. 修理後 チューナ基板 電解コンデンサー7個、TR(トランジスター)4個、調整用半固定VR4個交換。
C93. 修理前 チューナ基板裏
C932. 修理中 チューナ基板裏。 半田アースが取れている。
C933. 修理中 チューナ基板裏。 網線で半田を補強する。
C934. 修理後 チューナ基板裏。 半田アース。
C94. 修理(半田補正)後 チューナ基板裏 半田を全部やり直す。
C97. 完成チューナ基板裏 コート液を塗り、乾燥後。
CA1. 修理前 電源整流。
CA2. 修理後 電源整流 電解コンデンサー1個、整流ブリッジ個交換。フイルムコンデンサー3個追加。
CB6. パネル清掃。
CC1. 交換した部品
CD1. 修理前 上から見る
CD2. 修理後 上から見る
CD3. 修理前 下から見る
CD4. 修理後 下から見る
E. 測定・調整
E1. 出力・歪み率測定・調整
    「見方」。
   上段中 右側SP出力を「Audio Analyzer Panasonic VP−7723B」により測定。
         表示LED、 左端=メモリーNo、 中左=周波数測定、 中右=出力電圧測定、 右端=歪み率測定。
   上段右端 VP−7723Bの基本波除去出力を「owon SDS8202(200MHZ)」で「FFT分析」表示。
   下段中 左側SP出力を「Audio Analyzer Panasonic VP−7723B」により測定。
         表示LED、 左端=メモリーNo、 中左=周波数測定、 中右=出力電圧測定、 右端=歪み率測定。
   下段右端 VP−7723Bの基本波除去出力を「owon SDS6062(200MHZ)」で「FFT分析」表示。
   下段左端 オーディオ発振器 VP−7201A より50Hz〜100kHzの信号を出し(歪み率=約0.003%)、ATT+分配器を通し、AMPに入力。
          よって、ダイアル設定出力レベルより低くなります。測定機器の仕様や整備の様子はこちら、「VP−7723B」「VP−7201A」。 FFT画面の見方はこちら。
E21. AUX,50Hz入力、R側SP出力電圧13V=21W、 0.79%歪み。
     Low_AMP、      L側SP出力電圧13V=21W、 0.76%歪み。
             「FFT分析」のオシロのカーソル周波数、左=250Hz、右=1kHz。
E22. AUX,100Hz入力、R側SP出力電圧13V=21W、 0.78%歪み。
     Low_AMP、       L側SP出力電圧13V=21W、 0.82%歪み。
              「FFT分析」のオシロのカーソル周波数、左=250Hz、右=1kHz。
E23. AUX,500Hz入力、R側SP出力電圧13V=21W、 0.75%歪み。
     Low_AMP、       L側SP出力電圧13V=21W、 0.74%歪み。
              「FFT分析」のオシロのカーソル周波数、左=2.5kHz、右=10kHz。
E24. AUX,1kHz入力、R側SP出力電圧13V=21W、 0.74%歪み。
     Mid_AMP、      L側SP出力電圧13V=21W、 0.74%歪み。
             「FFT分析」のオシロのカーソル周波数、左=2.5kHz、右=10kHz。
E25. AUX,4kHz入力、R側SP出力電圧13V=21W、 0.72%歪み。
     Mid_AMP、      L側SP出力電圧13V=21W、 0.72%歪み。
             「FFT分析」のオシロのカーソル周波数、左=25kHz、右=100kHz。
E26. AUX,10kHz入力、R側SP出力電圧7V=6W、 0.62%歪み。
     High_AMP、      L側SP出力電圧8V=8W、 0.62%歪み。
              「FFT分析」のオシロのカーソル周波数、左=25kHz、右=100kHz。
E27. AUX,50kHz入力、R側SP出力電圧7V=6W、 1.4%歪み。
     High_AMP、      L側SP出力電圧7V=6W、 1.4%歪み。
              「FFT分析」のオシロのカーソル周波数、左=100kHz、右=500kHz。
E31. MM,50Hz入力、R側SP出力電圧13V=21W、 0.99%歪み。
     Low_AMP、     L側SP出力電圧13V=21W、 0.88%歪み。
             「FFT分析」のオシロのカーソル周波数、左=250Hz、右=1kHz。
E32. MM,100Hz入力、R側SP出力電圧13V=80W、 0.15%歪み。
     Low_AMP、       L側SP出力電圧13V=82W、 0.16%歪み。
              「FFT分析」のオシロのカーソル周波数、左=250Hz、右=1kHz。
E33. MM,500Hz入力、R側SP出力電圧13V=21W、 1.10%歪み。
     Low_AMP、       L側SP出力電圧13V=21W、 1.09%歪み。
              「FFT分析」のオシロのカーソル周波数、左=2.5kHz、右=10kHz。
E34. MM,1kHz入力、R側SP出力電圧13V=21W、 1.0%歪み。
     Mid_AMP、      L側SP出力電圧13V=21W、 1.0%歪み。
             「FFT分析」のオシロのカーソル周波数、左=2.5kHz、右=10kHz。
E35. MM,4kHz入力、R側SP出力電圧13V=21W、 1.0%歪み。
     Mid_AMP、      L側SP出力電圧13V=21W、 1.0%歪み。
             「FFT分析」のオシロのカーソル周波数、左=25kHz、右=100kHz。
E36. MM,10kHz入力、R側SP出力電圧7V=6W、 0.78%歪み。
     High_AMP、      L側SP出力電圧7V=6W、 0.94%歪み。
              「FFT分析」のオシロのカーソル周波数、左=25kHz、右=100kHz。
E37. MM,50kHz入力、R側SP出力電圧7V=6W、 2.2%歪み。
     High_AMP、      L側SP出力電圧7V=6W、 2.2%歪み。
              「FFT分析」のオシロのカーソル周波数、左=100kHz、右=500kHz。
G. 調整・測定 FM受信感度、RL分離測定調整
G11. FM 感度、RL分離測定調整 R側。
     FMステレオ信号発信器より 84MHZで 1KHZの Rのみ変調信号を 60dBで出す。
G12. R側SP出力電圧=5V、 歪み率 =1.5%。。分離度=Log5000/100=33.9dB。
      L側SP出力電圧=100mV。
G21. FM 感度、RL分離測定調整 L側。
     FMステレオ信号発信器より 84MHZで 1KHZの Lのみ変調信号を 60dBで出す。
G22. L側SP出力電圧=5V、 歪み率 =1.05%。分離度=Log5000/168=29.5dB。
      R側SP出力電圧=168mV。
G31. FM 感度分離測定調整
   FMステレオ信号発信器より 84MHZで 1KHZの変調信号を 60dBで出す。
G32. L側SP出力電圧=5V、 歪み率 =1.45%
      R側SP出力電圧=5V、 歪み率 =1.32%
G41. トラッキング調整 周波数=78MHZ。
G42. トラッキング調整 周波数=88MHZ。
M. AM調整・測定
M11. AMトラッキング調整 周波数=600kHz。
M12. AMトラッキング調整 周波数=1,400kHz。
S. TRIO・KenWood ST−8500 仕様(カタログ・マニアルより)
型式 システムコンポーネント ST−8500
オーディオアンプ部
組み込みアンプ形式 6台のアンプによるマルチチャンネル方式
出力、ミュージックパワー Low用44W=22W+22W(0.8%歪率)IHF規格/8Ω.
Mid用44W=22W+22W(0.8%歪率)IHF規格/8Ω.
High用15W=7.5W+7.5W(0.8%歪率)IHF規格/8Ω.
周波数特性 15Hz〜60kHz -2dB
出力帯域特性 18Hz〜50kHz (歪率0.8%、実行出力に対して-3dBの帯域)
内蔵電子ディバイディング周波数 Low-Mid 800Hz(12dB/oct)、
Mid-High 5kHz(12dB/oct)
入力端子及び利得 Phono(Mag)=2.4mV/1kHz.
Mic=2.4mV/1kHz.
TapePlay=130mV/1kHz.
(実行出力に要する入力電圧)
付属回路及び装置 電子クロスオーバー方式によるマルチチャネル回路、
テープモニタースイッチ、
DIN規格5P録再コネクター
マイクジャック及びスィッチ、
ノイズフイルター、
ラウドネスコントロール、
ヘッドホーンジャック、
BASS・TREBLEコントロール、
イコライザーRIAA
チューナー部
受信周波数 FM=2.0μV(IHF).
AM=15μV(IHF).
受信感度 FM=76MHz〜90MHz.
AM=520〜1610kHz.
セパレーション 35dB以上(400Hz)
付属回路及び装置 FET IC使用超高感度FMチューナー、
FMモノ←→ステレオ自動切替え装置、
FMステレオ表示ランプ、
SCAフイルター、
AMフェライトバーアンテナ、
同調表示メーター
スピーカー部
使用スピーカー 低音=30Cm フリーエッジ型 2個。
中音=16Cm コーン型 2個。
高音=     ホーン型 2個。
キャビネット 特殊設計パイプダクト型
プレヤー部
駆動方式 ベルトアイドラ・ダブルドライブ方式
駆動モーター 16極シンクロナスモーター
回転数 33 1/3、45rpm、2スピード
タンテーブル 31Cmアルミダイキャスト
ワウ 0.08%
トーンアーム スタティックバランス無共振S字型パイプアーム プラグイン式
カートリッジ MM型
自動機構 オートリターン、オートカット。 オートアイドラOFF
交換針 N−31型
全体
電源 100V 50/60Hz
消費電力 無信号時=28W、 最大出力時=150W
寸法 幅=1930 高さ=670 奥行=440mm
総重量 76kg
価格 169,800円、 月賦価格188,700円
その他 1969年 GOOD DESIGN AWARD(グットデザイン賞)。
部門=商品デザイン部門。
受賞対象の詳細=使用者、社会等への取り組み。
                      st8500_120
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